​がんの基礎知識

 細胞が無制限に増殖して周囲の正常な細胞を破壊し、いろいろな部分に転移を起こして生命に危険を及ぼす腫瘍を、「悪性腫瘍」または「悪性新生物(がん)」といいます。悪性腫瘍は、発生する細胞の種類によって、「癌腫」、「肉腫」「造血器」「造血器腫瘍」に大別されます。

 癌腫は、消化管や呼吸器粘膜、肝臓、腎臓などの臓器を構成する上皮細胞から発生する悪性腫瘍です。癌腫はさらに組織の型の違いから扁平上皮がん、腺上皮がん、未分化がんの3つに分けられます。肉腫は骨や筋肉などの細胞に発生する悪性腫瘍です。造血器腫瘍には、白血病や悪性リンパ腫などがあります。

 周囲の組織を破壊・浸潤して全身に転移し、人体に致命的な害を与える癌腫や肉腫のすべての悪性腫瘍を「悪性新生物」といい、また、「がん」と総称され、悪性新生物の代名詞として使用されることが多くなっています。発生要因としては、食生活、運動、喫煙、飲酒、休養などの生活習慣が関与していると考えられます。

​なぜ、人はがんになるのか

 人間の体は数十兆個の細胞でつくられていますが、がんは正常な細胞が変異を起こしてがん細胞に変わり、細胞増殖(分裂して増える)のコントロールが全く利かなくなり、勝手にしかも無制限に増え続けてしまう病気です。

細胞のがん化は、遺伝子に異常が生じることで起きることから「細胞の病気」または「遺伝子の病気」といわれています。

 がんは遺伝子の異常が原因で起こる病気ではあっても、親ががんであったから必ず子供もがんになるといった親から子へと遺伝する病気ではありません。ただし、小児の目にできる網膜芽細胞腫や小児の腎臓にできるウイルムス腫瘍の中のごく一部など、遺伝するがんも存在します。

 

 また、がんそのものが遺伝するわけではありませんが、がんの出来やすさが遺伝する病気として、大腸がんになりやすい家族性大腸腺腫症や、皮膚がんになりやすい色素性乾皮症、白血病になりやすいブルーム症候群などがあります。

 しかし、がんの多くは、遺伝要因よりは環境要因が大きいといえるため、がん化のきっかけやがん遺伝子を目覚めさせてしまうものは何かを知る必要があります。

​「がん遺伝子」と「がん抑制遺伝子」

 遺伝子の中には「がん遺伝子」と「がん抑制遺伝子」と呼ばれるものがあり、がん細胞はこれらの遺伝子に傷がつくことによって発生します。

 「がん遺伝子」は、細胞のがん化を進めるアクセルのような役割をします。多くの場合、「がん遺伝子」によってつくられるタンパク質は、正常な細胞の増殖もコントロールしていますが、その働きが異常に強くなることによって、細胞の増殖のアクセルが踏まれたままの状態になってしまいます。

 また、「がん遺伝子」が車のアクセルだとすると、ブレーキにあたるのが「がん抑制遺伝子」です。「がん抑制遺伝子」は細胞の増殖を抑制したり、異常な細胞に細胞死(アポトーシス)を誘導したりする働きがあります。つまり、「がん抑制遺伝子」に傷がつき、正常な働きができなくなると、がん化を促進する結果となってしまうのです。

 この2つの遺伝子がバランス良く正常に働いていれば、正常細胞の増殖の秩序が保たれます。ところが、バランスを崩すと細胞はがん化してしまい、どんどん増殖していきます。

​がん発生のメカニズム

 たばこのタールや排気ガスに含まれるベンゾピレン、ハムやソーセージの発色剤として使われている亜硫酸ナトリウムと肉に含まれるアミンが反応してつくられるニトロソアミン、動物性タンパク質の焦げなどに含まれるTrp-P-1、P-2(トリプP-1、P-2)などの化学物質やウイルス、活性酸素を発生させる放射線・紫外線などは、がん細胞をつくる原因となります。

 

 これらの物質を発がんイニシエーター(発がん誘起物質)といい、細胞の遺伝子が傷つき、がん細胞のもとができる段階を発がんイニシエーションといいます。

 発がんイニシエーターが、がん遺伝子に働きかけると、細胞に変異が起こります。しかし、これだけではがん組織はつくられません。がん抑制遺伝子や細胞が持つDNA修復の働きによって、遺伝子の変化を修理するためです。ところが、変異を起こした細胞が、どんどん細胞分裂すると、細胞はがん化して異型細胞となります。

 そして、この異型細胞をがん細胞に完成させ、増殖させていくのが発がんプロモーター(発がん促進物質)であり、この段階を発がんプロモーションといいます。発がんプロモーターは、それ自身が発がんを引き起こすものではなく、発がんを促進するものなのです。

 例えば、食事や飲酒として取り入れる塩分や脂質、糖質、アルコールなどは、過剰摂取することにより、イニシエーションを受けた細胞のがん化を促進すると考えられているため、発がんのプロモーターの一種とされます。

 

 また、たばこにはプロモーターの作用を持つ物質も含まれています。ほかには、性ホルモンや胆汁に含まれる胆汁酸、人工甘味料のサッカリン、農薬のDDTやBHC,断熱材のPCBなどがあります。

​発がん物質として代表的なもの

​ 遺伝子に影響を与えて、がんを発生させる可能性のある物質を「発がん物質(発がんイニシエーター、発がんプロモーター)」といいます。現在では、2,000種類以上の物質に発がん性が認められていますが、危険度の度合いはそれぞれ異なります。日常生活では、発がん物質を取り入れないように注意したいところです。

かび

とうもろこし、ナッツ類に生えるかびが作り出すアフラトキシンという物質は、強力な発がん作用を持ちます。

亜硝酸塩+アミン

ハムやウインナーソーセージの発色剤である亜硝酸塩と肉や魚に含まれるアミン類が酸性条件下の胃内で反応すると、変異・発がん物質として知られるニトロソミアンが生成されます。

たばこ

たばこの煙の中には、ニトロソアミン、ナフチルアミン、ベンゾピレン、ヒドラジンなどの発がん物質が含まれ、細胞の遺伝子に傷をつけます。

​がんを防ぐための12箇条

 1985年に、国立がん研究センターから「がんを防ぐための

12箇条」が提唱されました。

科学的根拠に基づき、ガンを防ぐための生活習慣の改善の

ポイントを揚げ、国内で広く普及啓発されてきました。

そして、2011年に、これまでの免疫調査や研究結果をもとに

内容の一部が見直しされ「がんを防ぐための新12箇条」が

発表されました。

①たばこは吸わない

②他の人のたばこの煙をできるだけ避ける

③お酒はほどほどに

④バランスのとれた食生活を

⑤塩辛い食品は控えめに

⑥野菜や果物は豊富に

⑦適度に運動

⑧適切な体重維持

⑨ウイルスや細菌の感染予防と治療

⑩定期的ながん検診を

⑪身体の異常に気が付いたら、すぐに受診を

⑫ただしいがん情報でがんを知ることから

 がんを防ぐためにも、日ごろの食生活や運動習慣などを見直し、生活改善を図っていくことが大切です。