​高脂血症の基礎知識

高脂血症・脂質異常病とは

 脂質異常症とは、血液中の脂質の値に異常がある状態です。血液中の脂質には、コレステロール、中性脂肪(トリグリセライド)、遊離脂肪酸、リン脂質の4種類があり、主なものはコレステロールと中性脂肪です。LDLコレステロールや中性脂肪が多くなりすぎたり、HDLコレステロールが少なくなりすぎると脂質異常症となります。

 脂質異常症が長く続くと、血管に異常が起こり、虚血性心疾患や脳血管疾患の原因となる動脈硬化を引き起こします。動脈硬化を起こす原因は他にもありますが、特に脂質異常症と動脈硬化は密接に関わっています。

動脈硬化は狭心症・心筋梗塞・脳梗塞の原因となり、死に至る場合もあります。

​脂質の主な働き

 コレステロールや中性脂肪などの脂質は、体の中で重要な役割を担っています。

体にとっては必要なものですが、増えすぎると問題になります。

脂質の種類には、コレステロール、中性脂肪(トリグリセライド)、遊離脂肪酸、リン脂質の4つがあります。主に問題となるのは、コレステロール、中性脂肪の2つです。

​コレステロール

 コレステロールは、細胞膜の構成成分になったり、副腎皮質ホルモンや性ホルモンなど、各種ホルモンや胆汁酸の材料になります。胆汁酸は脂質の消化吸収に関わっているため、コレステロールが不足すると、腸での脂質の消化吸収が悪くなります。

コレステロールの必要量は、1日あたり1.5~2g程度で、このうち体内(肝臓など)で70~80%が作られ、残りの20~30%は食物から取り入れています。体内で作られる量は、食物から摂取されたコレステロール量に合わせて肝臓で調整されています。しかし、慢性的にコレステロールの摂取量が多かったり、遺伝や糖尿病などが原因で、肝臓での調節機能がうまく働かなかったりすると、血中LDLコレステロールが増え、脂質異常症になります。

 コレステロールや中性脂肪は水に溶けないため、水に溶けやすいリン脂質に囲まれ、リポタンパクとして血液の中を流れています。血液中のコレステロールは、常にリポタンパクの形で存在し、血液の中を流れ、全身の細胞へ運ばれています。

 

 リポタンパクは、組成によって比重や粒子サイズが異なり、主にカイロミクロン、VLDL(超低比重リポタンパク)、LDL(低比重リポタンパク)とHDL(高比重リポタンパク)に分けられます。

 このリポタンパクのうち、コレステロールを最も多く含むLDLは、血液中に増えすぎると血液壁の細胞内に蓄積して動脈硬化を引き起こす原因となります。そのため、悪玉コレステロールと呼ばれます。一方、タンパク質を多く含むHDLは、各部位の細胞で使いきれなかった余分なコレステロールや動脈壁に蓄積したコレステロールを回収して肝臓に運ぶ役割をし、善玉コレステロールと呼ばれています。

 LDLが多すぎたり、HDLが少ないとバランスが崩れ、組織中にコレステロールが溜まることになります。

​中性脂肪

 中性脂肪は、エネルギーを凝縮した形で貯蔵する、エネルギーの貯蔵庫という重要な役割があります。人が活動するとき、エネルギーとしてまず利用されるのはブドウ糖ですが、それが足りなくなると、中性脂肪をエネルギー源として使います。

 中性脂肪は、肝臓で合成されたり、食物から体内に取り入れられ、皮下脂肪や内臓脂肪として蓄えられます。皮下脂肪は、体を保温したり、外からの衝撃や圧力から臓器を守るという役割も果たしています。しかし、高エネルギーの食事や、アルコール、菓子類などを取りすぎたり、運動不足で消費エネルギーが少ないと、血液中に中性脂肪が増え、脂質異常症を引き起こします。

血液中の中性脂肪が増えると、善玉であるHDLコレステロールを減らし、悪玉であるLDLコレステロールを増やすといわれています。つまり、中性脂肪の増加によって動脈硬化が促進されるのです。

 また、増えすぎた中性脂肪は肝臓に蓄積して脂肪肝という状態を起こし、肝臓障害を引き起こします。

​脂質異常症の原因

​ 脂質異常症は、食事の内容、特に動物性脂質に多く含まれている飽和脂肪酸の摂取量が大きく関与しています。日本人の食生活は、穀物・野菜・魚中心の食事から、肉中心の食事に変化し、動物性脂質の摂取量が急増しました。この健康は特に若者に顕著で、若年層のLDLコレステロール値を引き上げる原因にもなっています。このことから、今後さらに脂質異常症患者が増えると予想されています。

​脂質異常症を誘発する生活習慣

​食べすぎや脂っこいものなど高カロリーの食事

コレステロールや飽和脂肪酸を含む食品の取りすぎ

菓子類や果物の食べ過ぎ

アルコールの飲みすぎ

運動不足

喫煙

ストレス(肝臓でのコレステロールや中性脂肪の合成が促進されます)

​脂質異常症の症状

​ 自覚症状がほとんどなく、多くは健康診断などの血液検査で発見されます。そのため、知らないうちに進行してしまうことが多く、放っておくと動脈硬化が進み、重大な病気を引き起こします。

 また、ごくまれに目に見える症状が現れることがあります。コレステロール値が極端に高い場合が続くと、黄色腫というコレステロールのかたまりができたり、角膜輪という白い輪が黒目の外周にできます。中性脂肪値が極端に高い場合は、皮膚に黄色腫ができます。

​脂質異常症の診断基準

高LDLコレステロール血症・・・LDLコレステロールが140mg/dl以上

境界域高LDLコレステロール血症・・・LDLコレステロールが120~139mg/dl

低HDLコレステロール血症・・・HDLコレステロールが40mg/dl未満

高中性脂肪血症・・・中性脂肪(トリグリセライド)が150mg/dl以上

​脂質異常症の治療

 長期間にわたって糖質異常症があると、LDLコレステロールが全身の動脈に付着して、血管の硬化などの変化を起こし、動脈を狭くしたり、閉塞したりします。このことが、狭心症、心筋梗塞、脳梗塞、閉塞性動脈硬化症など、動脈硬化症の病気の原因となります。これらの合併症はいったん発病すると、救命はできても体の機能低下を残し、不自由な生活を強いられます。

​ 脂質異常症の治療の進め方は、食事療法と運動療法からはじめ、それらを行っても治療目標値に届かないときには、薬物療法を考慮します。

​食事療法

 低脂肪食、低糖質食、高タンパク質食を考慮して

適切な摂取エネルギー量を守り、コレステロールと

中性脂肪の摂取を控えます。

 

肥満を伴っている場合には、適正体重に達するように

食事指導を行います。

①適正エネルギー量を摂取する

 過食、過飲はエネルギーの過剰摂取となり、過剰分は中性脂肪として蓄えられて肥満をもたらします。肥満は脂質異常症の症状を進行させるので、適正エネルギー量を摂取し、標準体重を保持します。中性脂肪は糖質から容易に合成されるので、脂肪を減らすだけでは不十分です。特に、アルコールや菓子類は控えるようにしましょう。

②飽和脂肪酸を控える

 飽和脂肪酸の摂取を控え、不飽和脂肪酸を適正に摂取します。特にLDLコレステロールの減少作用があるDHAやEPAが含まれる魚(いわし、さんま、さばなど)の積極的な摂取がおすすめです。

③コレステロールの少ない食品を選ぶ

 LDLコレステロール値が高い場合は、卵、魚卵、レバー、脂質の多い肉類などの摂取を控えます。

④糖質の過剰摂取を控える

 糖質の過剰摂取は、中性脂肪、LDLコレステロールの増加を招くので、十分に注意します。果糖や砂糖などが過剰にならないようにします。果糖や砂糖の含有量の多い清涼飲料水の摂取は控えます。

⑤タンパク質を十分に摂取する

 タンパク質が不足すると、コレステロールの運び役であるリポタンパクも不足し、肝臓にコレステロールが蓄積されてしまうので、十分に摂取します。また、肉類は、脂質の少ない部位を選ぶようにします。

⑥ビタミンを十分に摂取する

特に、ビタミンB2は、脂質代謝に関与して血中脂質の処理を促進します。

⑦食物繊維でコレステロール値を下げる

 食物繊維はコレステロールの吸収を抑制して排泄を促進し、血中LDLコレステロール値を下げる作用があります。特に、果物や野菜に多いペクチン、こんにゃくのグルコマンナン、海藻類のフコイダンなど、水溶性食物繊維が有効です。

⑧アルコールの過剰摂取を控える

 アルコールは中性脂肪を増やすので、適度に制限します。

​運動療法

 脂質異常症の治療は、食事療法と並行して運動療法を取り入れるのが一般的です。それにより、食事療法の効果も上がります。食事療法だけでなく、運動療法と併用することによってカロリー制限を行い、肥満をコントロールすることが重要です。

 運動することで心肺機能が高まると、血液の循環がよくなります。そして、LDLコレステロールや中性脂肪の分解が活発となり、HDLコレステロールが増える。また、持続的に運動する習慣を身に付けることによって、太りにくい体質となっていきます。

 しかし、日ごろから運動習慣がない人が、急に激しい運動をすると思わぬ負担を体に対してかけてしまう恐れもあるため、意思と相談の上、無理なく長く続けられる有酸素運動が適しています。有酸素運動は、糖質とともに脂質をエネルギー源として消費しやすく、体への負担も少なくなります。

 健康づくりの運動として有酸素運動を取り入れるにあたっては、普通に歩くよりはやや速い速度のウォーキングからはじめるとよいでしょう。また、肥満の人、足腰が弱く運動がしにくい人には水中ウォーキングが適しています。水中では、浮力が働くため、足腰にかかる負担が軽くなり、こうした部位を痛めることなく、運動ができるという利点があります。

​薬物療法

 薬物療法の開始時期は個人によっても違ってきますが、一般的には、食事療法と運動療法を併用しながら行い、3か月が経過しても治療の目標値に届かなかった場合には薬物療法を行います。治療薬には、主にLDLコレステロール値を下げる薬と、中性脂肪値を下げる薬があり、それぞれに適した薬が処方されます。

 また、薬物療法が開始されたからといって、生活習慣病の改善や食事療法、運動療法を行わなくてもいいということではなく、引き続き根気よく自己管理を続けていくことが大切です。